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クロジ 第17回公演 「いと恋めやも」 感想2

いと恋めやも 感想2

舞台全体の感想を書いて満足していたのに、パンフレットを読み直す過程で、登場人物への愛が溢れてしまい、止まらないので登場人物への感想をつらつらと書いていきます。

 

 

登場人物が皆さん魅力的なんです。

 

緋桜院 鴇忠(平野良さん)

緋桜院家の次男の鴇忠さんの性格はお屋敷のご当主というだけあって、厳格で冷静沈着。なのに所々にじみ出るお茶目さとか愛嬌溢れる動きとか、少し浮き世離れしている思考とか好きなお酒の銘柄にこだわりがありまくりなところとかで完璧すぎないところはやっぱり次男なんだなと思います。それか、にじみ出る平野良さんのお人柄なのか。

とりあえず、鴇忠さんは最初から最後まで優しいんですよね。しかも、最初からたぶんつつじちゃんのことが好きなんですよね。最初の内はきつめにあたりますけど、二人きりの時は基本つつじちゃんの話をよくきいてくれるし、結婚初夜はつつじちゃんを気にして、自分は外で寝るから自分の部屋で寝ろと自分からわざわざ出て行きますし・・・・・・。

人として、つつじちゃんと一緒にいたかったんですよね。

だから彼女に人間らしいって言われて嬉しそうに悲しんでたんですよね。

最高な男ですよ。鴇忠さん。

あと、これは平野さんとしてなのか鴇忠さんとしてなのかわからないですけど、

カーテンコールの時にずーっとつつじちゃんを気にしていて、最後二人で歩いて舞台中央から出て行くときに背中を押すようにレディファーストしてくれる姿にすごく感動しました。

 

山部つつじ(福圓美里さん)

私が観劇した回は福圓さんのつつじちゃんでした。

もう本当に健気で働き者で、優しくてかわいい。

鴇忠さんのちょっとした愛情表現に照れたり、笑ったり、怒ったり

朝ドラヒロインなみに好感度高かったです。

芯の強さと愛の深さと優しさが体現されてて、本当に太陽のような人で

大好きです。

つつじちゃんがじわじわと鴇忠さんが好きになっていってる様子がわかってすごく良かったです。いや、つつじちゃんは初対面で鴇忠さんには惚れていたのかなと思いつつ、好きだと気付くのが遅いのがまたつつじちゃんぽくて良かったです。

人ではない鴇忠さんを愛していて、それは揺るがない事実であるからこそ、この先に待っている未来は絶望しかないってみんなに言われて

その返しが私は未来に期待している(こんなニュアンス)っていう台詞がもう彼女の生き様そのもの過ぎて泣きました。

過去の私が繋いだ愛を未来の私が繋げないはずがないと言わんばかりのまっすぐさがすごい衝撃で、福圓さんのまっすぐな声音がまたさらに威力を増してくれてました。

 

緋桜院 茜(三石琴乃さん)

鴇忠さん達のお母さん。

三石さん!!!!とても良かったです。

この方に関しては本当に良かったとしか言葉が見つからない。

妖艶かつ、優美で、どこか無情なのに愛情が溢れていて、茜という役柄自体矛盾の塊みたいな複雑なのにそれを繊細に体現されてました。

穏やかな雰囲気と声の中に場面に応じた喜怒哀楽が含まれていて人ではなく死ぬことが出来ず何年何十年何百年過ごしてきた孤独とか無限の時間の怖さとかがなんとなく伝わってきてしまうような雰囲気がすごい。

三石さん自体何者なのかって感じでした。

茜も愛されたかっただけなのかなぁと思うばかり、愛されることを知らないが故に愛を与える側はいつまで経っても愛を与える側にしかなれないのかなと思います。

そこがかなしい。

(家族には愛されていたと思いますけど、家族も愛する事の意味がわかってなさそうだから無限ループ)

 

緋桜院 雀(松崎亜希子さん)

雀さん・・・・・・。私一番この人好き!と思った。

多分、この人が一番いと恋めやもの世界で人間だった気がする。

そして、松崎さんめちゃくちゃ芝居が上手いんだなと思った。

役柄的にかもしれないんですけど、喜怒哀楽の強弱が秀逸。テンポとか雰囲気とか見せ方とかすごい。

雀さんは夢見る少女で、愛されたくて、愛したくて、幸せになりたくて、っていう女の子中の女の子。

趣味は刺繍なのに破天荒な振る舞い故、周りに恥ずかしくていえないところとか、男女平等の考えがすごく近代的で聡明。ただ、人を食べちゃう事だけが足かせになってしまってるところが無情。人を食べてしまう自分に幻滅してるのに、食べないと生きていけないこともわかってるし、運命の恋人に出会いたいと願いつつも恋人はそれはもう美味しそうに見えてしまうから本能的に止められない。

雀ちゃんは聡明なんです。だからこそ、しんどい。

来世は人間に生まれてきてくれるといいなと願うばかり。

 

緋桜院 蘇芳(沖野 晃司さん)

蘇芳さんは自由気ままで、ムードメーカーで、どこか不器用。

鴇忠さんの感想を書いたときに冷静沈着で完璧過ぎないところが次男らしいって書いたんですけど、蘇芳さんは逆です。

放浪癖があって、自由気ままで、ムードメーカーな彼は誰にでもいい顔をして、常時冗談を言ったりしていますが、根は真面目で完璧主義。

婚約者の香さんを食べた時、彼女が自分から離れて行こうとしたことがきっかけだったけれども、彼は真面目で完璧主義、間違った選択肢は踏みたくないという本心と向き合うことにけっこう体力を使ってしまう性格だと思うので自分の気持ちを言葉にするのに時間がかかってしまうことがわかっていたからこそ、香さんを食べるという結末になってしまったのではないかなぁと思います。自由気ままの仮面を被っていた方が楽だったんですよねって感じで本心に向き合わないといけなくなった後半は精神的に壊れていくのが本当に早かったですね。

この長男と次男の対比もすごく良かったです。

愛に対して自分なりの正解をもっているが故に相手の間違いを許せない長男と

愛に対してとても繊細に向き合っているからこそ、相手を受け入れたい次男。

沖野さんの蘇芳に対する歩み寄りがすごいのかな、前半と後半の細かな人格の演じ分けがすごい。

 

春日 香(牧野由衣さん)

蘇芳さんの婚約者。

体が弱くて、家から出してもらえなかったけれど、蘇芳と駆け落ちという形で家から出る。世間知らずのお嬢さん。

この人の世間知らずの箱入り娘感が良かった。

立ち姿にしても、お顔にしても話し方にしても品があって、愛嬌があって、つつじちゃんとの対比としてすごく目立ってた。

ただ、世間知らず故に恋に恋してしまい、相手を本当に見る事は出来なかったんだろうなぁと思います。(これは蘇芳さんも同じ)

この二人に関しては鴇忠さんとつつじちゃんとの愛の形とまったく違ってここでも対比があってよかったし残酷なくらいの対比。

私的には蘇芳さんも香さんも好きになった理由は顔ですって言うのは台詞の中であって、私はギャグかなぐらいの気持ちで聞いていたんですけど、実際は本当にそうだったのかと思わざる得ないですね。香さんも蘇芳さんも自分好みの喋る人形がほしくて、お互いがお互いに恋に恋して、愛に愛してしまったからあっけない最期だったのかなと思います。

 

緋桜院 長治(三原一太さん)

この人は本当にクセが強い。

三原さんの分析力というのか解釈というのか本当にいい意味でクセが強い。

THE神経質、THE嫌な奴。

この雰囲気を出せるのはすごい。

役者さんすごい。

何も台詞がなくても神経質で嫌な奴という雰囲気をあふれ出させていた。

つつじちゃんに嫌みばっかり言うし、態度は悪いしと印象は最悪なのに、

妹の撫子に向ける表情と化石に対する愛は本物かつ、純粋。

むしろ、純粋に愛しいものを目の前にしたときの長春さんは魅力的。

馬鹿みたいに素直で、従順。これぞ、GAP

兄弟の中で一番優しく、繊細なのは彼だと思う。

ただ、人の嫌な部分を兄、姉を通して見ている分嫌悪感がすごいんだろうなって思います。多分、兄姉であっても嫌悪感の対象で、何も知らない妹の撫子の目にはそんな嫌悪感溢れるものは見せたくないし、見てほしくないと思っていて、現状綺麗な妹は彼にとって唯一の恋愛対象なんだろうなって感じ。

 

緋桜院 撫子(小日向茜さん)

THE幼女、THE妹。

自分のかわいさと自分の性格と自分の立場を存分に理解した上で生きている女の子。

良い意味で小悪魔。

生きることにたいして器用。

兄弟の中では一番器用で聡い。

性格も口も悪いけど、人を選んでる感じが姑息。でも、かわいいから許すってなる。

でも、彼女は生死に関しては無頓着そう。

ただ、苦しいとかつらいとかは耐えられなくてそのときそのときが楽しくあればいいと思っている子だと思う。

彼女の愛の形は自分にしかないんだろうな。

自分が良ければそれが愛で、愛されたいけど、自分からは自分しか愛しません。

末っ子っぽい。

 

とりあえず、緋桜院家とつつじちゃんの感想をつらつらと書いてみました。

様々な愛の形がある中で、愛の形が同じだった人同士が上手くいくんだろうなと思いました。

つつじちゃんと鴇忠さんは

一緒に生きていたいという形が同じだったからあの結末だったのかと思います。

この物語がハッピーエンドなのかバットエンドなのかは観る人によって様々だとは思いますが、私はハッピーエンドであってほしいと願うばかりです。

 

いと恋めやもの感想はこれにて終わりです。

次回のクロジさんの公演も観に行きたいです。